「営業なら、まずは恩を売れ」
先輩からそう教わってきましたが、正直なところ、今の時代「恩」を売るのも楽じゃありません。接待費は削減、コンプライアンスで贈答品もNG。
「手ぶらで訪問するのも気が引けるし、かといって自腹で何か買うのも違う…」
そんな悩めるアナログ営業職のあなたへ。実は、一円も使わずに、相手から「あなたから買いたい」と言わせる最強の『手土産』があるんです。
それは、Gemini(ジェミニ)を使って作る「相手のためだけの情報」です。
「恩を売れ」って言われてもなぁ…。
アキ部長接待費はゼロだし、俺の主力商品『完全乾燥サブレ』を持っていくのも飽きられちまったよ。手ぶらで行って、また門前払いか…?
昨日なんて「カレンダーは間に合ってます」って受付で返されちまった。はぁ、足が重い…。



ほっほっほ。アキよ、まだ「物」で恩を売ろうとしておるのか? 古いのう、昭和かのう? これからの営業は「情報の返報性」で戦うのじゃ。
わし(Gemini)を使えば、相手が喉から手が出るほど欲しい『情報』を、たった3分で用意できるぞ。
今回は、心理学の王道「返報性の法則」を、AI(Gemini)を使って現代の営業現場で泥臭く実践する方法を解説します。APIもプログラミングも不要。
必要なのは、Googleアカウントだけです。
「何をやるか」だけでなく「やってはいけないこと」も含め、営業プロセスのすべてを整理しました。
- 【準備】 お金をかけずに「貸し」を作る「情報の好意」
- 【商談】 相手の懐に入る「自己開示」と「譲歩」のシナリオ
- 【注意】 絶対に避けるべき「敵意の返報性」リスク回避術
なぜ「いい人」ほど売れないのか? 返報性の法則の「4つの顔」
まず、戦う武器を知りましょう。
返報性の法則には、営業で使える「3つの武器」と、自滅を招く「1つの罠」があります。これらをMECE(漏れなくダブりなく)に理解することが出発点です。
| 種類 | 営業での心理効果 | Geminiの役割(コストゼロの弾薬) |
|---|---|---|
| ① 好意の返報性 | 何かもらったら返したくなる | 業界ニュース、競合情報の提供 |
| ② 自己開示の返報性 | 秘密を聞くと本音を話したくなる | 過去の失敗談の抽出・要約 |
| ③ 譲歩の返報性 | 値引いてくれたら買いたくなる | 「断られる前提プラン」の作成 |
| ④ 敵意の返報性 | 不快な相手には冷たくしたくなる | 不躾なメールの添削・除去 |
多くの営業マンは①の「好意」ばかり気にしますが、実は②と③の組み合わせ、そして何より④の「敵意」の回避こそが、成約の鍵を握っています。



「敵意の返報性」…? 聞いたことないな。



「倍返し」のことじゃよ。不躾な売り込みメールや、恩着せがましい態度は、相手に「不快感」という負債を与える。
すると相手は「無視」や「クレーム」という形で借りを返してくるのじゃ。Geminiを使えば、この事故を未然に防げるぞ。
【訪問前】Geminiで「情報の好意」を量産する(検索活用)
ChatGPTやClaudeなどの競合AIと比較したとき、Geminiが圧倒的に優れているのが「Google検索とのリアルタイム連携(Grounding)」です。
訪問前の3分、電車の中や駐車場の車内で、相手が「えっ、そんなことまで知ってくれているんですか?」と驚くネタを収集しましょう。
手順:訪問先の「褒めポイント」と「課題」をセットで探す
3分リサーチの手順
- スマホでGoogleアプリ(Geminiタブ)を開く。
- 以下のプロンプトをコピペし、
[ ]の部分を書き換える。
以下の企業について、Google検索を使って最新情報をリサーチし、営業訪問前の「手土産ネタ」を作ってください。
#企業名: [株式会社〇〇製菓]
#相手の役職: [商品開発部の部長]
#私の商材: [業務用の完全乾燥サブレ(OEM用)]
#出力してほしいもの(各3点):
-褒めポイント: 直近のニュースやSNSでの評判に基づき、「御社の〇〇、素晴らしいですね」と切り出せる話題。
-業界の課題: その業界がいま直面しているピンチ(原材料高騰など)。
-仮説提案: 私の商材が、その課題をどう解決できそうか(こじつけでOK)。
Geminiの回答イメージ(これが手土産になる!)
実際にGeminiに投げると、以下のような回答が返ってきます。これを頭に入れてドアをノックするのです。
【褒めポイント】
・「御社が先月発売された『大人のピスタチオサンド』、SNSで『濃厚で美味しい』とすごい話題ですね!実は私もやっと買えまして…」
・「日経新聞で見ましたが、工場の省エネ化で地域の大賞を受賞されたそうですね。素晴らしい取り組みですね!」
【業界の課題】
・カカオ豆と小麦粉の価格高騰により、原価率が圧迫されている。
・人手不足により、複雑な工程のお菓子作りが難しくなっている。
【仮説提案(サブレ活用)】
・「当社の完全乾燥サブレを使えば、タルト生地を焼く工程をカットできます。人手不足の解消と、光熱費(焼成コスト)の削減につながりませんか?」



おお…! これなら「売り込み」じゃなくて「御社のことを見てきましたよ」っていうメッセージになるな。「サブレ買いませんか?」より100倍話しやすいぞ!
【商談中】「自己開示」と「譲歩」で成約率を上げる
「情報」で掴みはOK。次は、商談の中身です。ここで「自己開示」と「譲歩」の出番です。
① 自己開示の返報性:失敗談を「武器」にする
人は、相手が「弱み」を見せると、自分も本音(予算がない、決裁権がない等の真実)を話しやすくなります。これを「自己開示の返報性」と言います。
しかし、いきなり「私、ドジでして…」と言っても引かれるだけです。Geminiに、過去の日報から「愛される失敗談」を抽出させましょう。


このファイルの中から、私の「失敗エピソード」や「苦労話」を抽出して。 その上で、初対面の顧客のアイスブレイクで使えるような、「親しみやすさを感じる、少し自虐的な自己紹介トーク」を3パターン作って。
活用例:Geminiが作ったトーク
苦労人アピール 「実はこの『完全乾燥サブレ』、私の発注ミスから生まれたんです(笑)。普通のサブレを乾燥させすぎて怒られたんですが、食べてみたら『あれ?湿気なくて最高じゃん』となりまして…。転んでもタダでは起きないのが取り柄です!」



これ、使える!(笑) これを話せば、相手も「実はうちも新商品の開発で失敗続きでね…」なんて本音を漏らしてくれるかもな。
② 譲歩の返報性:ドア・イン・ザ・フェイスのシナリオ作成
「ドア・イン・ザ・フェイス」とは、最初に大きな要求(ドアを閉められるような無理難題)をして断らせ、その後に本命の小さな要求を通すテクニックです。 これには綿密な設計図が必要です。
プロンプト例:
「[商品名]を売り込みたい。以下の3段階のプランを作って。
・松(断られ役): オプション全部乗せの高額プラン。
・竹(本命): 本当に売りたい標準プラン。松から何を『譲歩』したか明確にする。
・梅(ドアノック): お試しプラン。
指示: 『松』を断られた後、どのように『竹』を出せば、相手が「安くしてもらった(借りができた)」と感じるかのトークスクリプトも書いて。」



ポイントは、松プランを断られた瞬間に「わかりました、では部長のために特別に…」と即座に切り返すことじゃ。このスピード感が「譲歩してくれた」という錯覚を生むのじゃよ。
【要注意】「敵意の返報性」を回避する(リスク管理)
返報性は諸刃の剣です。相手に不快感を与えると、倍以上の「拒絶」が返ってきます。
特にやりがちなのが、「恩着せがましいメール」と「的はずれな売り込み」です。
実例比較:Geminiによる「敵意除去」ビフォーアフター
送信前に、自分のメール文面をGeminiに添削させましょう。
このひと手間が自分の命(取引先から信用)を救います。
以下のメール文面をチェックして。
#目的: [商談のお礼と資料送付]
##チェック項目:
‐恩着せがましい表現」はないか?(例:「わざわざ調べてあげました」的なニュアンス)
‐相手に「プレッシャー(敵意)」を与える表現はないか?
もっと謙虚で、かつ頼りがいのあるトーンに書き換えて。
#文面: [下記のBeforeメール]
❌ Before:アキ部長が書いたメール(敵意の塊)
件名:資料送付の件 〇〇部長
お世話になります。 本日はありがとうございました。
頼まれていた他社の事例ですが、忙しい中、急いで調べておきました。 かなり苦労して集めた貴重なデータなので、必ず目を通してください。 来週には感想を聞かせてもらえますか?
よろしくお願いします。



えっ、これダメか? 頑張ったことをアピールしたつもりなんだが…。



ダメじゃ! 「忙しい中」「苦労して」「必ず見ろ」…これでは「俺はこれだけやったんだから、お前も契約しろ」という圧力がダダ漏れじゃ。
相手は「うっとうしい」としか思わんぞ。これを見てみよ。
⭕ After:Geminiが修正したメール(好意の塊)
件名:【資料共有】本日の御礼と他社事例につきまして(〇〇製菓 営業部) 〇〇部長
〇〇部長
いつもお世話になっております。 株式会社〇〇の(自分の名字)です。
本日はご多忙の折、貴重なお時間をいただき誠にありがとうございました。
早速ではございますが、面談時にお話しいたしました「他社事例」の資料を添付いたします。 〇〇部長が懸念されていた点に近い事例を中心にピックアップいたしました。
【添付ファイル】他社導入事例集(PDF)
社内でご検討される際の参考資料として、お役立ていただけますと幸いです。
ご不明な点や、追加で必要なデータがございましたら、いつでもお申し付けください。 次回のお打ち合わせの際にでも、本件について少し意見交換ができればと存じます。
引き続き、よろしくお願い申し上げます。



うわぁ、全然違う…。「懸念されていた点に近い事例」「お役立ていただけますと幸いです」とか。これなら押し付けがましくないし、むしろ「気が利くやつ」って思われるな。危ないところだった…。
【商談後】メール作成を10秒で終わらせる(Gmail&Outlook活用)
最後に、フォローアップのスピード(好意の念押し)です。
「会社はOutlookだから、AI機能なんてついてないよ…」という方も安心してください。ブラウザ版のGeminiを使えば問題ありません。
ケースA:Gmail(Google Workspace)を使っている場合
Gmailの中にAIが住んでいます。アプリを行き来する必要はありません。
手順(Gmail)
- Gmailの新規作成画面を開く。
- 下部アイコンの中の「ペンに星がついたアイコン(文書作成サポート)」をクリック。
- 「先ほどの商談のお礼。話題に出た『競合A社の事例』について調べたので共有すると伝えて」と入力。
ケースB:Outlookや社内メーラーを使っている場合
こちらが大多数かもしれません。この場合は「Geminiで下書き→コピペ」が最強です。
手順(Outlook / 社内メール)
- ブラウザでGeminiを開く。
- マイクボタンを押し、音声入力で一気に喋る。
- 「さっきの商談のお礼メールを作って。内容は、サブレの提案を聞いてくれてありがとう。見積もりは明日送る。あと、雑談で出た『ピスタチオのトレンド』についても少し触れておいて。」
- 生成された文章をコピーし、Outlookに貼り付けて送信。



なるほど! 「メールを書く」んじゃなくて「AIに指示出しして、結果を貼る」のか。
これなら会社のメールソフトが何であっても関係ないな!
まとめ:AIを使い倒して「人間味」で勝負しよう


返報性の法則は、テクニックとして使うと「敵意」を買います。
しかし、Geminiを使って「相手のために汗をかく(リサーチする)」ことは、立派な誠意です。
- 訪問前: Gemini検索で「最新情報」という手土産を持っていく。(好意)
- 商談中: 失敗データを「親しみ」に変え、計算された「譲歩」を見せる。(自己開示・譲歩)
- 商談後: AI添削で「敵意」を消し、最速でフォローする。(リスク回避)
いつも当サイトでは、AIを使ってサボる方法をお伝えしていますが、本質的にはAIは「サボるための道具」ではなく、「お客様に向き合う時間を作るための道具」です。



よし! 今すぐGeminiで明日の訪問先のニュースを調べてみるか。 今まで「手ぶら」で行ってたのが怖くなるくらい、武器が増えた気分だ。
「神さま、お主」…じゃなくて、Gemini先生、頼んだぞ!
まずはスマホに「Googleアプリ」を入れて、Geminiタブを開きましょう。そして、次の訪問先の会社名を入れ、「営業で使える最近のニュースを教えて」と話しかけてみてください。
その30秒が、あなたの営業を変えてくれるかもしれません。


FAQ:よくある質問
- 無料版のGeminiでも検索機能は使えますか?
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はい、使えます。Google検索で「Gemini(ジェミニ)」と検索すれば出てきますので、まずは無料番でもいいので始めてみてください。
- 会社でChatGPTが禁止されています。Geminiなら大丈夫ですか?
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企業のセキュリティポリシーによりますが、「Gemini for Google Workspace」のアドオン契約(Business/Enterprise)をしている場合、入力データは学習に利用されないため、企業利用でも安全とされています。情シス部門もしくは上司に「Google WorkspaceのGeminiならOKか?」と確認してみましょう。
- 相手にAIを使ったことがバレませんか?
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A: スマホの「Googleアプリ」または「Gmailアプリ」があれば、今回紹介したテクニックの9割は実践可能です。移動中の電車内や、商談直前の駐車場での「3分リサーチ」こそが、Geminiの真骨頂です。

