アキ部長「うおおお!また失注だぁぁぁ!! お客様が『とにかく安くして』って言うから、部長に土下座して限界まで値引きした見積もり出したのに!
『今回は見送ります』ってどういうことだよ!?言われた通りにしたじゃんかよー!!」



「ほっほっほ。相変わらずポンコツじゃのう、アキよ。 それはお主が、お客様の口から出た『顕在ニーズ』という氷山の一角しか見ておらんからじゃ。
海の下に隠れている巨大な『潜在ニーズ』を見抜かん限り、その値引きはただの『安売り』で終わるぞ。」



「け、顕在?潜在?また横文字かよ神さま! 俺は忙しいんだよ!心理学の勉強なんてしてる暇ねーの!
スマホでパパッと正解だけ教えてくれよー!」



「よいよい。勉強など不要じゃ。お客様からのメールをGeminiにコピペするだけで、その『言葉の裏にある本音』は3秒で丸裸にできるんじゃよ。
これからの時代は、聞き上手より『AI使い上手』が勝つ。その極意、とくと教えてやろう。」
昨今の検索トレンドは、単純なキーワード検索から「AIによる文脈の理解(SGE/AI検索)」へと激変していると言われています。
営業現場でも同様に、顧客が言葉にできない「潜在的な不満」をAIで読み解くスキルが必須となりました。
この記事では、APIなどの難しい連携は一切不要。
40代のアナログ営業職でも実践できる「Geminiへのコピペを使った顧客心理分析」を世界一わかりやすく解説します。
- 潜在ニーズと顕在ニーズの違いが「氷山の図」なしでも直感的にわかる
- お客様のメールをGeminiにコピペして「本音」を暴く具体的な手順
- ただの営業マンが「AI使いのコンサルタント」に進化する泥臭いデジタルトランスフォーメーション術
潜在ニーズと顕在ニーズの違い、AIなら「氷山」で理解する
まずは、営業マンが永遠に悩み続けるこの2つの言葉の違いをハッキリさせましょう。
教科書的な定義ではなく、「なぜAIならそれが見えるのか」という視点で解説します。
【図解なしでもわかる】顕在ニーズ(氷山の一角)と潜在ニーズ(海の中)



「よく研修で『氷山の絵』を見せられるけどさ、結局どういうことなんだ? お客様は『安いのがいい』って言ってるんだから、それが全てだろ?」



「甘いのう。いいか、『ドリルが欲しい』というお客様がおるじゃろ?顕在ニーズとは『ドリルが欲しい』という言葉そのものじゃ。
だが、潜在ニーズとは『本当は穴を開けたい』、さらには『穴を開けて棚を作り、奥さんに褒められたい』という心の奥底の願望のことじゃ。」
マーケティング理論やAIの視点で整理すると、両者の違いは以下のように明確になります。
| 項目 | 顕在ニーズ (Manifest Needs) | 潜在ニーズ (Latent Needs) |
|---|---|---|
| 定義 | 顧客が自覚しており、言葉にできる欲求 | 顧客も気づいていない、または言葉にできない悩み |
| イメージ | 氷山の一角(水面に出ている部分) | 海中の巨大な塊(水面下の9割) |
| 顧客の言葉 | 「安くして」「機能一覧をくれ」「納期はいつ?」 | 「なんか使いにくい」「最近、部下が疲れてるかも…」 |
| 営業の対応 | 御用聞き(言われたものを売る) | 提案・コンサル(課題を発見して解決する) |
| AIの得意技 | 検索キーワードに対して正確なデータを出す | 文脈や状況から「推論」して正解を導き出す |
「ミルクシェイク」の事例でわかるジョブ理論 ハーバード白熱教室でも有名な「ジョブ理論」をご存知でしょうか?
あるファストフード店で、朝に大量のミルクシェイクが売れる理由を調査しました。
- 顕在ニーズ(アンケート結果): 「もっと濃厚にして」「フルーツを入れて」
- 潜在ニーズ(行動観察): 「退屈な運転中の気晴らしがしたい」「昼までお腹を持たせたい」
顧客は「シェイク」が欲しいのではなく、「退屈な通勤時間を埋める」という仕事(Job)を解決するためにシェイクを雇っていたのです。これを見抜くのがAI分析です。
40代営業マンが陥る「経験」という名の邪魔な色眼鏡
なぜ、ベテラン営業マンほど潜在ニーズを見落とすのでしょうか?それは皮肉にも「経験」が邪魔をするからです。
- 「この業界なら、だいたいこのパターンだろ」
- 「前回も値引きで決まったから、今回も価格勝負だ」
こうしたバイアス(思い込み)が、お客様の微細なサインを見逃させます。
心理学でいう「確証バイアス」です。自分に都合のいい情報しか見えなくなっているのです。
なぜGeminiは「空気を読まず」に本音を見抜けるのか?
ここでGeminiの出番です。
AIには「営業の勘」も「お客様への気遣い」もありません。その代わり、膨大なデータに基づいた冷徹な論理的推論があります。



「わし(AI)は空気を読まん。その代わり、文脈(コンテキスト)を読むのじゃ。
『安くして』という言葉の前後に、『上司の承認が…』とか『来期予算が…』という言葉があれば、 『ああ、この人は安くしたいのではなく、社内説得の材料が欲しいのだな』と冷静に分析できるんじゃよ。」
AI検索(SGE)のアルゴリズムも同様です。
ユーザーの曖昧な検索ワードから「本当に知りたいこと(インテント)」を推論するように、Geminiはお客様のメールから「本当の悩み」を推論します。
【実践編】Geminiに「潜在ニーズ」を分析させるコピペ術
ここからは、実際に明日から使える「Gemini活用術」です。
難しい設定は一切不要。必要なのは「コピペ」だけです。
準備:お客様からの「お断りメール」や「議事録」を用意せよ
まず、分析対象となるテキストを用意します。
- 失注メール: 「今回は見送ります」と言われた冷たいメール。
- 商談議事録: お客様との会話のメモ(雑なメモ書きでOK)。
- 問い合わせ文: HPに来た最初のお問い合わせ内容。
【コピペOK】言葉の裏にある「不安」と「欲望」を逆算するプロンプト
以下のプロンプト(命令文)をコピーして、Geminiのチャット欄に貼り付けてください。
マーケティングの「5回のなぜ(5 Whys)」分析や「ジョブ理論」を組み込んだ、プロ仕様の指示書です。
あなたは世界トップクラスのマーケティングコンサルタントであり、行動心理学のプロフェッショナルです。 以下の【顧客とのやり取り】を分析し、顧客自身も言語化できていない「潜在ニーズ」をあぶり出してください。
#分析対象テキスト [ここにメールや議事録を貼り付ける]
#命令事項 以下の4つの視点で深掘り分析し、表形式で出力してください。
【顕在ニーズ】(表面的な要求 / Wants) 顧客が口頭や文面で明確に要求していることは何か?
【潜在ニーズ深掘り】(5回のなぜ / Latent Needs) 顧客の要求に対し「なぜ?」を5回繰り返し、深層心理にある「真の動機」や「恐怖」を特定せよ。 (例:安くしたい→なぜ?→予算がない→なぜ?→上司に説明できない→なぜ?→自分の評価が下がるのが怖い)
【ジョブ理論的解釈】(雇用される理由) 顧客はこの商品を雇用(Hire)することで、どのような「片付けるべき用事(Job)」を解決しようとしているか? ※機能面だけでなく、情緒的(安心したい)・社会的(認められたい)側面も含めて記述すること。
【キラー・クエスチョン】(魔法の質問) 次回の商談で、顧客の潜在ニーズに刺さる「魔法の質問」を3つ提案せよ。
実演:Geminiが見抜いた「安くしたい」の裏にある「上司に怒られたくない」心理
では、アキ部長が実際に受け取った「値引き要求メール」をGeminiに読ませてみましょう。
【アキ部長が受け取ったメール】
「ご提案ありがとうございます。機能は素晴らしいのですが、やはり他社と比較してコストが見合いません。初期費用をあと20万円引いていただけないでしょうか?それができれば前向きに検討します。」
これを上記のプロンプトでGeminiに投げると、こんな回答が返ってきます(抜粋)。
Geminiの分析結果(例)
| 分析項目 | Geminiの回答 |
|---|---|
| 顕在ニーズ | 初期費用を20万円安くしたい。 |
| 潜在ニーズ | 真の恐怖:「お前が選んだ業者は高いじゃないか」と上司に詰められ、評価が下がるのを回避したい。(なぜ安くしたい?→稟議が通らない→説明が面倒→自分の評価が下がるのが怖い) |
| ジョブ理論 | この顧客のJobは「コスト削減」ではなく、「賢い選択をした担当者として社内で認められること」、あるいは「稟議をスムーズに通して安心すること」である。 |
| 魔法の質問 | 「もし20万円の値引きが難しい場合、『他社よりもランニングコストで3年で50万円得する』というシミュレーション資料があれば、社内での説明はしやすくなりますか?」 |



「な、なるほどぉぉ!! そうか、こいつは金がないんじゃなくて、『上司への言い訳』が欲しかったのか!
それなら値引きじゃなくて、『稟議用比較資料』を作ってやるのが正解だったのか…!」



「その通りじゃ。これが『潜在ニーズを満たす』ということじゃ。 値引き(顕在ニーズへの対応)は誰でもできる。だが、担当者の保身(潜在ニーズ)を助ける提案は、お主にしかできん。それが差別化じゃ。」
「インサイト」まで深掘りする!Google AI Pro(有料版)の優位性
さて、ここまでの分析は無料版のGeminiでも可能ですが、さらに深く、「顧客さえ気づいていないインサイト(洞察)」まで到達するには、有料版である「Google AI Pro」が圧倒的に有利です。
無料版とここが違う!Google AI Proのメリット
- トークン量(記憶容量)が違う 無料版では「直前の会話」程度しか深く記憶できませんが、Google AI Pro(搭載モデル:Gemini 3Pro)は100万トークン、つまり本数冊分のテキストを一度に読み込めます。過去1年分のメールを全部読み込ませて分析することが可能です。
- 推論能力(IQ)が高い 複雑な文脈や、行間を読む能力が格段に高いため、「なんとなく」のニュアンスから的確な心理分析を行います。
- データプライバシー(重要) ここが最重要じゃ。Google Workspaceの法人契約プラン等であれば、入力データがAIの学習に使われない設定が可能じゃ。ビジネスで使うなら、ここをケチってはいかんぞ。
※Geminiのデータプライバシーに関する詳細は、Google公式のGemini アプリのプライバシー ハブを参照してください。
過去のやり取りを全部読ませて「顧客プロファイリング」を作る
Google AI Proを使えば、特定のお客様との「過去の全メール履歴」や「全商談議事録」(PDFやテキストファイル)をアップロードし、以下のような指示を出すことができます。
「このお客様(A社)の過去1年間の発言傾向を分析し、彼らが最も重視している『隠れた価値観(インサイト)』を特定せよ。また、彼らが怒りを感じる『地雷ポイント』も列挙せよ。」
これをやることで、まるでベテラン秘書のように「あ、部長。
A社の田中さんは『革新』よりも『安定』という言葉を好みます。提案書には『実績』の数字を多めに入れましょう」とAIがアドバイスしてくれるようになります。
これこそが、LLMO(Large Language Model Optimization)時代の新しい営業スタイルです。
AIに最適化された情報をインプットし、最高のアウトプットを引き出すわけです。
まとめ:聞き上手より「AI使い上手」が勝つ時代





「よし!わかったぞ! 要するに、お客様のメールが来たら、とりあえずGemini神さまにコピペして『これの裏にある本音は何?』って聞けばいいんだな! これなら寝ながらでもできそうだ!」



「その通りじゃ。読むだけで満足せず、まずは今日届いた一番長いメールをコピペしてみるのじゃ!
お客様の『建前』に隠された『本音』が見えた瞬間、営業の世界が変わって見えるはずじゃぞ。」



「よーし、早速やってみるぜ! ……って、おい!Geminiが『このメールの送信者は、あなたに対して強い不信感を抱いています』って分析してきたぞ!? 俺、嫌われてたのかーーー!?」



「ほっほっほ。それは…ドンマイじゃな。 さあ、嫌われてると分かれば対策も打てる。挽回の一手もAIと考えるのじゃ!」
- Geminiに顧客のメールをそのまま貼って大丈夫?
-
A. 無料版の個人アカウントを使用する場合、入力データがAIの品質向上(学習)に使われる可能性があります。
顧客名や社名、金額などの機密情報は必ず「A社」「〇〇円」のように伏せ字(マスキング)にしてから入力してください。Google Workspace(法人向け)プランであれば、データは学習に利用されません。
- AIの分析は本当に合ってるの?
-
100%正解とは限りません。あくまで「推論」です。
しかし、自分ひとりの思い込みで突っ走るより、「AIという冷静な第三者の視点」を入れることで、視野が広がり、提案の選択肢が増えることが最大のメリットです。

